小坂まさ代2023年第4回定例会一般質問(その1)アートを生かしたまちづくり
1.アートを生かしたまちづくり
文化芸術基本法に基づき、文化芸術推進基本計画(第2期)が本年3月に閣議決定された。この計画の前文には「国際的にも、多様性、包摂性、持続可能性をキーワードとした新たな社会の実現に、文化芸術が大きく貢献することが共通認識となりつつある。また、文化芸術は世界の平和にも寄与するものであり、地球規模の課題に対して、国際社会が連携・協調し、その解決を図ろうとする動きが活発になる中、人々のウェルビーイングの向上を図るためにも、文化芸術が果たす役割が増大している」とある。
近隣自治体のアートに関する状況を見ると、小平市では武蔵野美術大学との共同アートプロジェクト「小平アートサイト」を毎年実施、小金井市では芸術文化振興計画推進事業「小金井アートフル・アクション」を実施。国立市では「文化と芸術が薫るまちくにたち」を掲げる国立市文化芸術推進基本計画に基づき「ACKT(アートセンタークニタチ)」というアートプロジェクトが実施されている。
現在の本市における芸術・アート関連の計画は、文化振興条例に基づき平成29年3月に制定された第2次文化振興計画の中に含まれているが、市民の意識実態調査で「市民が身近に芸術にふれあえるまちを実感している」と答えた割合は僅か2.1%、「ある程度実感している」を合わせても1割半ばという結果。「国分寺市の文化芸術の拠点の形成を目指すことを通じて、芸術文化の価値を広く普及することに取り組んでいく必要があります」と課題について言及されている。
市として、これまでまちづくりにアートを取り入れる検討をしたことはあるか。
まちに関わる人づくりの一環として、アートに関わる市民の自発的な活動に対して支援をしてきた経過はあるが、まちの中に作品を置き続けられるスペースがないこともあり、検討はしていない。
○小坂
アートとは、絵画、彫刻、工芸、建築など形あるものだけではなく、詩、音楽、舞踏、パフォーマンスなども含めた総称とされている。作品だけではなく「活動」そのものも含んでいることから、制作過程や表現そのものもアートと捉えれば、スペースがなくとも生かし、取り入れることは可能と考える。
例えば、東山道武蔵路の遺構前をキャンパスに見立て、ストリートチョークアートを行っていた。また、こくぶんじカレッジ修了生が中心となり、過去2回開催されたこくフェスでは、いずみホールやリオンホール、公民館、駅前広場や国分寺駅の自由通路、カフェやライブハウス、神社など約30か所でプロ、アマ問わず、大人だけではなく、学生や子どもたちにより様々なジャンルの音楽が演奏され、2日間の動員数は昨年、今年ともに1万6,000人を超えていたと聞く。まちじゅうに音楽が流れ、各所で笑顔と会話があふれていた。まちづくり推進課の「まち」が自分事になる連続講座「こくぶんじカレッジ」は人にフォーカスし、やがて芽を出し、あちこちで花開くまちづくりの種まきの事業だと高く評価。こうした参加者一人ひとりの発想や活動自体がアートであり、こうした活動を、講座終了後もさらに生かしていってほしい。
また、本市は隣接する小平市に美大があることもあり、アートに対する高い意識と思いを持った市民の方が数多くいる。これまでも、畑でのアート制作、古い社員寮を使った子どもアート、公園に期間限定で展示された野外アート、お鷹の道や北町公園などのアウトドアギャラリー、カフェでの65歳以上のロックコーラスグループのパフォーマンスなど、本市には子どもから高齢の方まで市民発のすばらしい試みが多数ある。こうした活動が単発ではなく続けられるよう、さらに広がっていけるような支援を要望。他市の事例などからも分かるように継続的なアートの取組によって人と人とがつながり、コミュニティが生まれる。今後もまちの中で市民が主体的に参加できるような場を設計する視点を持った施策を、また、まちなかでアート活動を行いたいという市民の支援を、例えば催しの運営費用の一部助成や、空き家や公共施設などの場所の提供などに柔軟な対応を求める。見解を伺う。
○まちづくり部長
こくぶんじカレッジでは、受講者がまち歩きをして見つけた課題に対して、それぞれの自発的な発想を基にこくフェスなどの様々な企画を受講者自ら打ち出し、それを市が支援している。修了生一人一人がまちを生かして何かをしたいという「種」になっていることから、生まれた企画への支援はしていきたいと考える。また、費用の一部助成については、こくぶんじカレッジでは資金集めを自らできる人材を育成するために、こくぶんじカレッジによる直接の助成は行っていないが、当市や他団体の活用できる助成金の案内は可能。場所の提供については現在も柔軟な対応をしている。これらを引き続き進めていきたい。
○小坂
令和7年度からの次期文化振興計画案について。市民の生活にアートがより身近に感じられるような計画にしてほしい。「文化」だけではなく「芸術」という言葉も名称に加えることを検討してはどうか。次期計画策定について、現状と見解を伺う。
○市民生活部長
提案の「国分寺市文化振興計画」という名称に「芸術」という文言を加えるかどうかは、今後の計画策定の検討の中で慎重に議論していきたいと考える。また、庁内の推進委員会だけではなく、公募市民、関係団体から推薦を受けた委員で組織する国分寺市文化振興市民会議でも議論していく。さらに、関係団体や文化団体連絡協議会のヒアリングや市民ワークショップも実施し、検討していきたいと考えている。策定の状況については、現在今年の秋に実施した市民意識調査の点検、入力、集計、分析の作業を行っている。市民意識調査は回収率41.5%と多くの方にご協力をいただいた。今後は、年度内に団体ヒアリング等を行う予定。市民参加の場を設けながら、より一層、本市の文化振興につながるような計画づくりを進めていきたい。
○小坂
(2)共生社会に向けてアートと福祉の連携を
近年、障害のある方のアート作品や活動に注目が集まっている。障害というと、できないことがある欠落を連想しがちだが、アートという視点で見直してみると、既存の価値観に左右されない個性的で豊かな感性、大胆な発想、高い集中力などのすばらしさに気づく。障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を目的として、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が平成30年6月に施行された。また、この法律第7条の規定に基づき、厚生労働省と文化庁は平成31年3月、障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画を策定。この計画は障害者の文化芸術活動によって社会がより豊かになっていくための道筋を示したものであり、文化や芸術に触れる機会を増やし、実際に創作している人を増やし、創作したものを多くの人に見てもらえるようにし、交流の機会を増やしていくというもの。その結果、障害のあるなしに関わらず対話が生まれ、相互理解が進んでいくものと考える。本市では12月3日から9日まで、「だれもがお互いを尊重し、支え合い、自分らしくいきいきと暮らせるまち」を目指して障害者週間の催しが行われるがアートに関しての取組について伺う。
○福祉部長
障害福祉課では、毎年障害者基本法で定める12月3日から9日までの障害者週間に、障害や障害のある人についての理解の促進、また障害のある方も活躍できる社会を目指し、関係団体と共に様々な取組を実施している。今年はリオンホールで12月3日にイベントを行うとともに、cocobunji WEST5階、まちの魅力発信コーナー及びセレオ国分寺9階、インドアガーデンにおいて障害のある方々の作品展示を実施。絵画などのアート作品も展示。ぜひ多くの方にご覧いただきたい。
○小坂
アートには、ありのままの存在を認め合い、誰もが創造の可能性を秘めているということを気づかせてくれる力がある。ボーダーレスアートやアールブリュットと呼ばれるこうした障害のある方によるアートは、発表や評価が目的ではなく、根源的な創造力で満ちあふれている。その作品や制作活動を通じ、「どんな人も存在するということ自体に価値がある」という気づきを促し、自分の生き方について考える機会を与えてくれていると考える。目指す共生社会の実現に向け、アート作品の展示スペースの継続的な利用や催しの企画など、アートを通じた交流ができるよう、また多くの方の目に触れるような機会を要望する。