市町村議会議員研修[3日間コース]社会保障・社会福祉」に参加

令和6年度「市町村議会議員研修[3日間コース]社会保障・社会福祉」参加しました。

社会保障、子育て支援、少子化問題、福祉・介護サービスの人材確保と育成、生活困窮者支援、高齢者介護と地域共生社会といった多岐にわたるテーマについて、講義や事例を通して現状や制度を理解したうえで、今後、地域としてどのような仕組みづくりを進めていくことができるのかなどについて考えました。
以下要点のまとめ

1 将来の社会保障の姿を考える
2040年の社会のイメージをデータなどで共有したうえで、すぐそこまで来ている超高齢化社会に対応するにはどうしたらよいのか。

◆医療と介護の一体提供⇒地域包括ケアネットワークの構築
◆在宅医療の強化⇒地域完結型医療…かかりつけ医機能の強化。開業医とそれを支える
地域密着病院

地域医療構想と地域包括ケアは車の両輪である

国はどう考えているのか?
→2040年頃にかけて迫りくる我が国の内政上の危機とその対応
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562116.pdf

国や自治体がやるべき政策
◆女性の就労の場を確保する
◆結婚しても仕事を継続できる条件を整備する

2 これからの子育て支援
「子どもを産み育てやすい社会」の構築
「子どもの健やかな成長・発達が保障される社会」の実現に向けた変革
★予防型支援の重要性
子育て支援が目指すものは「家庭における子育てを強化する」ことではなく「地域や社会全体で子育てを支える」ことである。
そのためには、すでに起こっているリスクに対してアプローチするだけではなく、リスクの発生を防止する、一般家庭を含むあらゆる家庭に必要な支援をする「ポピュレーションアプローチ」が重要。

「こども家庭センター」
→市区町村におけるポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチの両機能の一体化する拠点。児童相談所は最重度の案件のみ。ハイリスクまでは各自治体で担当することとなる。

3 少子化問題を考える
日本の少子化の最大の要因は未婚者の増加
恋愛・結婚格差、子どもを持たない人の割合の増加、子どもの数の格差
男性では1943~1975年どの年代に生まれた人でも収入が高いほど子どもを持つ割合が高い。男性で子どもを持たない割合は増えているが、特に年収が低い層で増え幅が大きい。
女性では1956~1970年の間に生まれた人では大卒の人は大卒未満の人と比べて子どものいる人の割合が少ないが、1971年以降に生まれた場合は差異は見られなくなっている。
→経済的理由を背景に若い世代での家族形成・子どもの有無の価値判断に変化

少子化対策のために何をすればよいのか?
→子育て支援と少子化対策は同じではない。
子どものいる世帯への経済的支援の効果は限定的である。育児休暇の影響も限定的。

就職氷河期世代とその後に続く停滞した社会の犠牲。個人に責任を帰すのではなく、マインドセットの変化・社会構造を変えることが必要である。
生殖、そして子孫を残すことは本来的には生物の本能的行為のはず。裕福な人のみが結婚し子孫を残せる社会を許容するのか?

4 福祉・介護サービスの人材確保と育成
介護費は改定率1.59% (同2100億円程度)のうち、6割以上の0.98% (同1300億円程度)を介護職員の給与などの処遇改善分としている。3年前の改定率は0.7%。今回は大幅に上回った。
人材不足は介護保険制度が抱える最も大きな課題。22年度は介護業界を辞めた人の数が働き始めた人の数を初めて上回り、6万人以上が離職。40年度には70万人近い人手不足が想定されている。
介護報酬減で訪問介護の危機。訪問介護事業所で従事しているヘルパーの26.3%が65歳以上となっている。近い将来、ヘルパー全体の4分の1が引退する。
家族の介護をしながら働く人の介護離職は年間10万人にのぼる。

育児介護休業法改正案 令和7年4月施行予定。従業員の申し出を待つだけではなく相談しやすい環境づくりが必要。
介護人材の高齢化、増加する福祉施設の労働災害。
「エイジフレンドリー補助金」
高年齢労働者のための職場環境の改善に要した費用の一部を補助。令和6年度も実施予定

高齢労働者がいることを前提とした業務フローや安全管理対策を。

★縮小社会における介護・福祉人材確保育成策
・家族介護者の支援 社会的に評価し現金の手当・給付のみならず休日の取得と代替介護の保障、社会保険料の負担など家族介護者をどのように支援するのか検討が必要。
・看護と介護の共通基礎教育や福祉と看護・保健医療の共通基礎資格の導入を。
地域における包括的なケアを目指すにあたり、介護専門職に求められる専門性の範囲
の拡大、看護と介護の連携の必要性の高まり、相互に求められるケアの基礎的な能力には多くの共通性がある。

5 生活困窮者の実態と支援策
生活困窮(貧困)をどのようにとらえ、対応策をどのように考えるか。
生活困窮の多様な側面を理解する。現金給付だけは解決しない。
信頼できない相手や解決が期待できない相手には相談は寄せられない。
福祉の制度はメニューである。それを必要とする人に届け生活に寄与させてこそ、生活を支える機能を実際に果たすことができる。伴走型支援の重要性。
「地域」というのは便利な言葉。誰が支えるのか。具体名で語る必要がある。

6 高齢者介護と地域共生社会における市区町村議会の役割
地域包括ケアと地域共生社会の定義
地域包括ケアは 「住み慣れた地域」で高齢者の 「包括的」な支援と規定。
地域共生社会は分野属性に問わず支え合うことを想定。
2014年成立の地域医療介護総合確保推進法
地域の実情に応じて、 高齢者が可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制
2017年2月、 厚生労働省 「我が事 丸ごと」 地域共生社会実現本部決定
制度・分野ごとの「縦割り」や「支え」 「受け手」 という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会
介護保険は現在、財源不足と人材不足が大きな制約条件となりつつあり、対応策が焦点となっている。

認知症に関する条例制定の動き
2022年3月までに20自治体で制定。東京都世田谷区、千葉県浦安市では条例制定に際し、認知症当事者の意見を丁寧に聴取。
2024年1月施行の認知症基本法では、自治体に対し、認知症施策推進計画の策定を努力義務として求めている。

医療と介護の連携
個別事例の共通課題から、地域づくり、政策に発展させていく流れが重要。
地域ケア会議。専門職には専門性と関心ごとを持っており、それぞれの強みを持ちより、弱みに気づくことが多職種連携の意義。
重層的支援体制整備事業の「相談支援」は部署を一元化するのではなく、どこに相談が入っても対応することが目的。既存制度を活用しつつ、アウトリーチ的に地域との連携を。
行政の体制も縦割りを厳格に運用するのではなく、制度間の壁を残すことで、それぞれの責任を明確にしたうえで連携することが重要。縦割りを維持しながら、横串を刺していく柔軟さを。
いきなり新しい仕組みを作るのではなく、既存の取り組みや仕組みを少し変化させる工夫を。

議会の長所
合議制のため様々な意見を施策に反映できる。
日頃から市民と接しているため少数意見をくみ取れる。
既存施策や縦割りと無関係に施策を考えられる可能性がある。
地域の実情を踏まえ、高齢者の暮らしから施策を発想する必要がある。

7 演習 グループワーク
生活のしづらさのある人たちへの支援として、自治体が民間専門機関との連携や地域住民
との協働も含めて、できることは何か。
事例「を」考えるのではなく、事例「で」考える地域ケア会議が必要。
支えあいは福祉だけではない。趣味、まちづくり、防災など地域住民のあらゆるネットワ
ークも意識する必要がある。

これらの点を踏まえ、各議員が日頃相談を受けている実際の複合的な事例をあげ、対応を話し合った。障害のあるお子さんのいるご家庭への支援、同性カップルの居住支援、8050問題など。