小坂まさ代2023年第3回定例会一般質問(その1)図書館について

1、図書館について
(1)読書バリアフリー法について
令和元年6月、視覚や発達、肢体不自由等の障害により読書に困難を抱える方が自分に合った方法で読書できる社会の実現に向けて、本を様々な形式で提供することを推進するため、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律、(通称)読書バリアフリー法が施行となった。
この法律施行前後において、本市ではどのような障害者サービスが実施されているか。
○教育部長
目や身体等が不自由で来館が困難な方、通常の活字では利用しにくい方のために、各図書館では様々な取組を行ってきた。読書バリアフリー法施行前から実施しているものは、大活字本や点字図書の収集やデジタル録音図書の音声DAISY、マルチメディアDAISYの貸出、サピエ図書館等のデータネットワークを利用し、録音媒体にダウンロードして貸出を行うほか、対面朗読サービスや郵送による貸出等を実施。法施行後において、新たなサービスは行っていないが、デジタル録音図書DAISYの音訳範囲の拡充や、易しい言葉で書かれたLLブックの拡充を行った。また、昨年8月から導入した電子図書館でも、文字の大きさを変えたり、内容を音声で聞くことができるようになっている。

○(小坂)
令和4年度事務報告書によれば、障害者サービス登録者数は48名で、児童はゼロ。サービスの周知について問う。
○教育部長
コロナ禍で広く周知をする機会が得られなかったが、それ以前は障害者支援団体で行っているイベントや障害者団体の視覚部会等で図書館サービスについて周知を行ってきた。今年度になり、障害者団体の集会等も再開してきているのでPRを行っていきたい。
また、9月24日には、障害者サービスを担当している光図書館の事業として、図書館の障害者サービス資料体験展示会を予定している。

○(小坂)
こちらの展示会は、ふだんあまり目にする機会がない障害者サービス用の資料や機材を体験できる貴重な機会になる。当事者の方への情報提供という意味合いだけではなく、一般の方の障害理解の促進にもつながると考える。今後、他館での開催も検討を要望。
また、障害福祉課との連携や特別支援学級、学校への周知も求める。
障害者サービスについての図書館職員の研修について。実際に利用者に対応する職員の方の法律やサービス内容についての知識、障害に対する理解や配慮などが重要と考える。
本市においては、どのような研修を行っているのか。
○教育部長
令和3年に障害者サービス担当職員により、厚生労働省作成のリーフレット等を使用し、障害者等への資料の貸出や障害者資料の種類や取扱いなどについて職場内研修を実施。また、日々の業務の中でも職員間や委託業者先とは、OJTを実践するなど、情報共有に努めている。
○(小坂)
障害の有無にかかわらず、全ての子どもに読書の喜びを届けたいという願いから、誰でもが楽しめる工夫がされた、様々な種類のバリアフリーの本が置いてあるコーナー「りんごの棚」
1993年にスウェーデンの図書館で始まり、世界各地に広がっている。多摩地域では青梅市や府中市などに設置がされている。本市でも検討を。
○教育部長
市図書館では、各種絵本については児童書コーナーなどで、また、LLブックについては別のところに配架しているが、出版点数、購入点数ともに少ない状況。特別な配慮を必要とする子どもを対象としたアクセシブルな本のコーナーとして、1か所に集約するということは、子どもや保護者にとっても効果的で分かりやすい取組と考える。他の図書館との関連も含め、スペースの状況を見ながら、今後、検討していく。

○(小坂)
入口の特集コーナーはりんごの棚を知ってもらう絶好の機会になるのではないか。多くの利用者に多様な資料の存在や障害そのものを広く知ってもらう機会にもなり得る。名称やロゴは自由に使用でき、許諾の必要はないとのこと。ぜひ、まず期間限定の特集展示として提案する。
先日、都立多摩図書館のりんごの棚を見てきたが、障害のある子だけではなく、読書が苦手な子や嫌いな子も、布の絵本や字の少ない絵本との出会いで読書を楽しめるようになる可能性を感じた。
障害者サービスをハンディキャップサービスという名称に変えた自治体もある。図書館の利用に障害があるという考え方で、高齢者やけがや病気で図書館に足を運べない方、妊産婦、日本語を読むのに困難を抱えている方など様々な利用者支援の総称として使われている。本市でも検討を。今後も当事者の声を聞きながらニーズを受け止め、より使いやすいサービスにするために、この法律が第8条で求める地方公共団体における読書バリアフリー推進計画についても、今後、研究を求める。

(2)まちづくりの視点から新しい恋ヶ窪図書館を考える
現在、本市では、令和3年3月策定の国分寺市現庁舎用地利活用基本方針を受け、現庁舎用地利活用複合公共施設整備事業と民間活用事業の一体的な利活用計画が進められている。現在の進捗状況は。
○公共施設マネジメント担当部長
本年3月に国分寺市現庁舎用地利活用基本計画を策定。今年度は基本計画に基づき、複合公共工事に伴う基本設計業務を開始した。本業務の契約期間は令和5年8月から令和6年9月までとし、現在は設計条件等の整備を行っている。
○(小坂)
本市において、移設とはいえ、新しい図書館が建設されるのは、昭和63年に並木図書館ができて以来となり、市の中心に位置する立地もあり、市民の方たちの期待が高まっている。現在の図書館は、静かな空間で、本を借り、読書をする場所という従来のイメージが変わりつつあり、社会に新たな価値を提案する新しい公共図書館が全国で生まれている。「多目的」「多機能」「フリースペース」というワードは本市の計画にも見られるが、機能を並べただけの寄せ集めの施設ではなく、融合し、新しい価値を生み出す複合的施設という視点を設計やデザインに落とし込んでほしい。
現在の恋ヶ窪図書館の延べ床面積は640平米、この計画の中では600平米とやや減少しているが、共有部分のフリースペースも閲覧コーナーとして使えるよう考えていくとのこと。現在よりもトータルで下回ることのないよう設計を。
フリースペースは多世代が集える「まちのリビング」と感じられるようなアットホームな空間に。パブコメには「休憩やコワーキング、勉強ができるカフェ併用のスペースがあると、気軽に利用しやすい」という意見もあった。恋ヶ窪図書館は5館の中でも本市の貴重な地域資料を所蔵する中心館としての役割もある。十分なスペースの確保を。
全市的に足りない閉架書庫として現在の恋ヶ窪図書館を使用できれば、新しい図書館の閉架スペースを狭くし、開架スペースを広く取ることも考えられるのではないか。地域図書館はコミュニケーションが生まれる、会話のある場所という新しい認識が生まれている。静かに過ごしたい方用には「静寂読書室」を設け、通常の閲覧スペースでは、話したり親子で読み聞かせをしてもよい図書館が増えている。図書館と同じフロアに公民館の保育室を設け、保育室から絵本のコーナー、お話室から児童書のコーナーへと自然な動線をデザインするのもよいのでは。現在、本多と光のみで行われている、託児つき図書館サービスを、市の中心に位置する新しい恋ヶ窪図書館でも実施できるようにするのはどうか。
図書館は本を貸し出すだけではなく、地域の情報拠点としての役割もある。既にパブコメ
でも市民意見が寄せられているが、今後も懇談会やワークショップなどを通じ、様々な意見やアイデアが寄せられることと思う。図書館運営協議会や利用者懇談会などで出された意見も、ぜひ設計への反映を期待。見解を伺う。
○公共施設マネジメント担当部長
国分寺市現庁舎用地利活用基本計画で定めた施設計画や導入機能、必要諸室などの考え方に基づき、諸室の配置計画や管理運営の在りなどを、利用者、障害者団体等との対話、ワークショップなどの開催や庁内調整を行うとともに、他自治体の新しい取組も参考とするなど、市民サービスの向上を図るべく取りまとめを行っていきたい。
(3)歴史資料のデジタルアーカイブ化について
本市では、デジタル博物館として、市の史跡や文化財等の写真や資料を公開しているが現状と課題について問う。
○教育部長
現在、市立図書館が管理しているポータルサイトにおいて、デジタル博物館を運営いつでもどこでも国分寺市の文化財資源に親しんでいただけるよう、市制施行50周年を契機としてつくられたもの。内容は国分寺市の文化財を広く周知することを趣旨とし、誰にでも分かりやすい文章に加え、できるだけ解像度の高い写真を掲載。その他、NHKの『ブラタモリ』という番組で、以前、放送時に使用された武蔵国分寺の復元映像も掲載している。現在、原始8件、古代22件、中世7件、近世30件、合わせて67件の文化財を掲載。なお、サイト運営は図書館課が、解説や画像などの素材の提供はふるさと文化財課が行っている。
課題は、本サイトは市制施行50周年を契機につくられたものであり、随時の更新はしているものの、大きな改修はしていない。技術的な進歩や他市の好事例を参考に、より親しみやすく、興味を持ってもらえるようなサイトとなるよう研究をしていく必要があると考えている。
○(小坂)
デザインや使い勝手に課題があると感じた。来年は市制60周年の節目の年。世界中から国分寺の文化財資源に親しめるよう魅力的なデジタル博物館となるよう進めていただきたい。
図書館振興財団では、郷土、地域資料、貴重資料等のデジタル化に伴うデジタルデータの公開事業に対する助成金を出しており、多摩地域でも2017年度は昭島市が、2018年度、町田市が、2019年度には多摩市が選ばれ、約1,400万円から3,000万円の助成がされたようだ。本市でも、デジタルアーカイブ化を進めるために、今後、こうした助成金の活用を検討してはいかがか。
○教育部長
まずは、これまでと同様、ふるさと文化財課と連携しながら、図書館として、今後、どのようなサイトとしていくのか、趣旨や目的を明らかにして、閲覧者がより身近に興味を持ってもらえるような、そういった内容や素材を検討する必要があると考える。その際のシステム改修に必要な経費などについては、図書館振興財団の助成金の活用も視野に入れて考えていきたい。
○(小坂)
令和4年度、博物館法が改正となり、博物館資料のデジタルアーカイブ化が明文化された。本市の資料館は、この適用範囲ではないとのことだが、近い将来、しっかりと取り組んでいただき、貴重な資料をより多くの方に見ていただけるよう、今後の取組に期待する。

(4)市立図書館、都立図書館と学校図書館との連携について
現状、都立図書館との連携についてどのような取組がされているのか。都立図書館の資料は直接利用者が借りることはできないが、市立図書館からリクエストし、取り寄せて借りることが可能。昨年度の都立図書館からの貸出冊数も併せて答弁を。
○教育部長
都立図書館との連携については、都立図書館の事業周知への協力やリクエスト本の取次ぎ、都立図書館主催の研修会への参加などを行っている。また、都立図書館の企画展示において、国分寺市の地域資料を提供した実績もある。令和4年度の都立図書館からの貸出冊数は3,120冊。

学校図書館との連携については、どのような取組がされているのか。
○教育部長
学校図書館とは、エリアごとに司書教諭、学校司書、図書館職員をメンバーに、年2回の連絡協議会を開催し、関係づくりを行うとともに、調べ学習への資料提供協力等を行っている。学校との連携については、2年生の生活科での図書館探検、3年生の社会科見学、中学生の職場体験学習の受入れ、学級文庫の貸出、サマースクールでの図書館職員による読み聞かせ、図書館近隣の学校図書委員によるお薦め本の紹介などを行っている。また、小・中学校教諭の中堅職員資質向上研修として、図書館において研修の受入れも行っている。

(5)学校司書について
本市の学校司書については、司書同士の情報共有や意見交換、他校の展示の仕方などを学ぶ貴重な自主研修の機会でもあった司書連絡会が平成29年度より年4回から年度初めの1回のみになった。元に戻していただけるよう、学校司書から、以前、要望が届けられたと聞いている。コロナ禍を経て、現在の司書連絡会について、開催状況やその意義について問う。
○教育部長
学校司書は、市内各小・中学校に1名配置しており、子どもたちの読書活動を支える重要な役割を担っている。各校の学校司書、司書連絡会、担当校長、教育委員会事務局で構成された連絡会を年1回年度当初に学校司書の情報共有を目的として開催。また、図書館課が中心となって、ブロック学校連絡会も実施している。
○(小坂)
学校司書の業務内容は、貸出や返却、書架整理、読書指導だけではなく、本の選定や発注、蔵書点検、図書館システムデータの管理、本を使った調べ学習の指導、レファレンス、館内の掲示や展示、図書だよりの発行、市立図書館との連携やブックトーク、読書の作成、本の修理や図書委員会の活動支援、ボランティア対応など、その業務は多岐にわたり、仕事量もかなり多いと考える。学校によっては昼休みや放課後の図書室開放にも対応している。児童数や学級数が増え、教員だけではなく、学校司書の負担もさらに増えているのではないか。私調べだが、この3年間で6名の方が退職されたと聞いている。個人的な事情もあるかと思うが、各校に任せ切りにせず、業務量を市としてしっかり把握し、フォローすることが重要と考える。以前から要望のある研修の実施や処遇改善、相談しやすい体制づくりなど検討を要望。
2020年から小学校、2021年から中学校で新しい学習指導要領がスタートしているが、その中では、主体的・対話的で深い学びを実現することを目指し、重視されているのが探求学習。子どもたちが自分で課題を設定し、解決していく学びの支援をしていくために、学校図書館は大きな役割を果たし、学校司書の存在はその柱となる。学校司書に対するサポートについて、改めて見解を伺う。
○教育部長
各校においては、管理職や図書担当の教員が中心となって、児童・生徒の読書活動の計画を立てており、学校司書は図書担当の教員と連携しながら、購入図書の選定や蔵書点検、展示などの環境の充実、貸出、返却などに対応している。学校司書の研修については、まずはOJTを基本とし、各学校の管理職、司書教諭の資格を持つ図書担当の教員が業務内容に応じて指導・助言を行っている。また、市の教育研究会、図書館部の研修会や講演会に参加した職員もいた。専門的な職員として任用しているので、自己研鑽に励んでほしい。また、必要に応じてメールや電話を活用して、必要な情報交換も行っている。学校司書を新規に配置した場合は、年度途中であっても、近隣の学校から学校司書を派遣し、基本的な業務や学校図書館の機能の充実に向けてサポートする体制を取っている。引き続き現場のニーズを踏まえながら、サポートを行っていく。
○(小坂)
2022年度学校図書館整備施策の実施状況全国調査によると、アンケートに回答した多摩地域15市のうち、ほとんどが年に数回研修ありと回答。年に1度も学校司書研修を行っていないのは本市と羽村市のみ。平成28年11月29日、学校図書館の整備充実についてという文科省からの通知には、司書教諭や学校司書を対象とした研修を実施するなど、その資質・能力の向上を図ることが重要であると書かれている。OJTが基本、勤務時間内の研修はしないというのであれば、杉並区で配布されている学校司書ハンドブックのような共通マニュアルが必要なのではないか。学校司書は各校1人体制の中、それぞれが校内で連携を取りながら奮闘されていると聞いている。GIGAスクール構想が進む現在、学校司書の方々は、学校にとって、子どもたちにとって欠かせない重要な役割を担っていると考える。やる気と思いを持って配属となった方が働き続けられるサポートを要望する。
2022年、文科省は第6次学校図書館図書整備等5か年計画を公表。学校図書館の図書や新聞の整備、司書の配置に総額2,400億円を使途を指定しない一般財源として措置、各自治体
において、学校図書館の現状把握と、それに基づく適切な予算措置をとある。
また、本年3月、第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された。その基本方針は、1、不読率の低減、2、多様な子どもたちの読書機会の確保、3、デジタル社会に対応した読書環境の整備、4、子どもの視点に立った読書活動の推進とある。子どもの読書活動の推進に関する施策についての計画の策定を進めるようにとのこと。本市においても、次期計画策定に向け、しっかりと準備を進めていってほしい。