小坂まさ代2023年第4回定例会一般質問(その3)「生きる」支援を全力で。

、「生きる」支援を全力で。

2006年に自殺対策基本法が制定され、3万人台であった自殺者数は2万人台に減少、その効果が現れてきているようにも見えるがしかし、世界水準で見ると日本の自殺率は依然として高く、中でもコロナ禍を経て若者と女性の自殺が増えている。自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景があり、様々な要因が連鎖する中で起きている

(1) 自死の現状と課題
厚生労働省の地域における自殺の基礎資料によれば、本市の自殺率は2020年以降、やや高い水準で推移している。現状と課題について問う

健康部長
本市の自殺者数については増減を繰り返しながら減少傾向にあったが、新型コロナウイルス感染症が拡大した令和2年から4年については増加傾向となり、各年20人を超えている状況。これは全国的においても同様の傾向
自殺を取り巻く現状は、自殺者の原因、動機では健康問題が最も多い。市では、これまでも国分寺市自殺対策計画に基づき様々な事業を行っきたが、今後もひとり一人がかけがえのない個人として尊重され、誰も自殺に追い込まれることがない国分寺市を目指していくために、さらに各種取組を丁寧に推進していくことが必要であると考える

小坂
(2)国分寺市自殺対策計画について
現在、市では素案作成中だが、次期計画の特徴や重要な点について伺う

健康部長
自殺対策は精神保健的な視点だけでなく、社会経済的な視点を含む包括的な取組が重要。また、そうした生きることの包括的な支援を実施するためには様々な分野の施策、人々や組織が密に連携する必要がある。現在策定している第2次国分寺市地域福祉計画で自殺対策計画も施策のひとつとして、ほかの施策とともに一体的に取り組むものとして整理していることが大きな特徴であると考える。本市で初めて策定した現計画では令和3年度から令和5年度までの計画期間の中で、コロナ禍の影響もあり、目標としていた数値の改善を図ることが難しい状況ではあるが、この計画に基づいて全庁的に取り組んできた。次期計画では計画の趣旨に関する理解をさらに促進し、包括的な取組として行政、関係機関や団体、市民と共に推進していきたい

小坂
孤独や孤立を感じることを減らすためには日頃から顔の見える関係づくりが重要である一方で、地域につながることに難しさを感じている方もいる。そういった方への支援の視点も取り入れてほしい。また、地域におけるネットワークの強化も重要と考える。子育て円卓会議のような居場所づくりのネットワークも活用して連携を強化してほしい。見解を伺う

健康部長
様々な関係機関との連携が非常に重要だと考えており、様々な会議体を通じてネットワークを推進していきたい。

小坂
自殺対策においてゲートキーパー養成講座が大変重要な取り組みと考える。自殺対策におけるゲートキーパーとは、自殺のリスクにつながるような悩みに気づき、声をかけ、話を聞き、必要な支援につなげ、見守る人のこと。ゲートキーパー養成講座については職員のみならず、居場所づくりに取り組んでいる団体の方などにも広げてほしい。また、実際に相談を受けるのは専門職というよりは家族や友人であるという観点から、市民向けのゲートキーパー養成講座をさらに広げてほしい。また、さらなる庁内連携についても取り組んでほしい。見解を伺う

健康部長
近年はコロナ禍により、市民を対象とした養成講座ではなく、直接市民対応をしている部署の職員や民生委員の方を対象としてゲートキーパー講座を実施してきた。今年度からは対象を拡大し、市民への周知も行い、2回の開催を予定。8月30日に行った第1回では職員も含め56人の参加があり、うち市民参加は20人。市民の方からは、「今回の講座は入門編として、次につながる講座を開催してほしい」との意見もあった。来年度の実施に向け、見を踏まえ取り組みたい
庁内連携については、自殺対策において様々な組織の連携が重要であると考える。庁内組織では健康部、福祉部、子ども家庭部、教育部の相談支援を担当する部署で構成する国分寺市相談支援総合調整会議や、庁内各部の代表者、課長職で構成される国分寺市地域福祉推進委員会において地域福祉に関する庁内的な連携を図っている。ゲートキーパー養成講座も年々対象者の拡大に取り組んでいる既存のネットワーク組織の効果的な活用も検討しながら、総合的に取り組んでいきたい

小坂
厚生労働省のウェブサイトには「ゲートキーパーになろう!」というページがあり、その中に「誰でもゲートキーパー手帳」という心得が書かれた資料がある。ダウンロードして印刷し、持ち歩けるようになっている。ゲートキーパーは講座を受けないとなれないものではなく、周囲の方のためにも、自身のためにも、1人でも多くの方に知ってほしい。本市ホームページにも「生きるのがつらいと感じたら」というページがあるが、ぜひこちらでもリンクを貼るなどの周知を

健康部長
1人でも多くの方にゲートキーパーとしての意識を持ち、専門性の有無に関わらずそれぞれの立場で行動することが自殺対策につながるとされている。厚生労働省のホームページの情報は市ホームページでも情報提供し、周知していきたい

小坂

(3)「こどもの自殺対策緊急強化プラン」と学校での取組について
文部科学省令和4年2月の児童・生徒の自殺対策についてという資料によれば、2020年の子どもの年間自殺者数は499。その内訳は小学生が14人、中学生146人、高校生339人、特に女子中・高生の数が増加している。

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000900898.pdf
本市においても2018年から2022年の5年間で20歳未満の方が6名も亡くなっている。国では、子どもの自殺対策の司令塔としてこども家庭庁に自殺対策室を設置、厚生労働省や文部科学省、警察庁などの関係省庁と連携し、子どもの自殺対策の強化に向けて取り組んでいくとのことだが、本市として各校で既にどのように取り組んでいるのか、またこれから取り組んでいくのか伺う

教育長
こどもの自殺対策緊急プランにおいては様々な提言が行われており、その中にSOSの出し方に関する教育」が示されている。本市では、当教育委員会が作成しSOSの出し方に関する教育を推進するための指導資料」などを活用し指導を進めている。例えば小学校5年生の保健の授業では、不安や悩みへの対処をテーマとし、映像教材やワークシートを活用して不安や悩みの概要について知り、つらいとき、つらい気持ちになったときにどのように対処するか児童が考え、相互に伝え合う取組を行っている。また、中学校の学級活動では、映像教材の具体的な事例を通して自分がかけがえのない大切な存在であることに気づかせるとともに、ストレスへの様々な対処方法を理解して、危機的状況において援助を求める行動や方法について考えさせるといった取組を進めている

小坂
SOSの出し方教育を受け、やっとの思いで大人に相談した際に受け止めてもらえなかったと子どもが思ってしまっては、「やっぱり駄目だった」と人生を諦める状況に陥りかねない。小さなことでも子どもが話してくれるためには、困り事を話してくれときに価値観を押しつけることなくありのままを受け止め、子どもにとって安心できる大人であることやSOSを出しても大丈夫な相手と認識してもらえる大人を子どもの周りに増やしていくことが非常に重要だと考える
一方で、若者の自殺対策を続けてきた専門家によれば、若い世代は相談窓口を訪ねることを躊躇しがちで、大人や専門家に悩みを打ち明けることが難しい傾向があるとのこと。内閣府の青少年意識調査によれば、悩みを相談する相手の第1位は友人という結果が出ている専門家以上に身近な同世代が大切な役割を果たしている。子どもたちの価値観を尊重した対策を行うためには、身近にいて話を聞ける同世代の存在を社会に広げていく必要があると考える。ゲートキーパーになるには、その学びの中で他者をサポートする前に、まず自分の異変に気づく力や自分の心をケアする力を持てるようになる。SOSの出し方と受け方の両方を学ぶことができる子ども・若者向けゲートキーパー講座を学校で取り組んではどうか。見解を伺う

教育長
学校教育は学習指導要領に基づいているため、ゲートキーパー養成講座の実施はなかなか難しい。ただ、ゲートキーパーになり得る人材の育成という視点においては、例えば講座の資料等を活用しながらSOSの出し方に関する教育などを充実させていくという視点はあろうかと考える

小坂
私たち大人ができることは、大人に向けてSOSを出してもらうことだけではなく、子どもたちが困ったときにお互いに気軽に相談したり、されたりすることができる安全な人間関係づくりができる環境を整えることではないか。学校がそうした場所であるよう強く要望する。学校へ行きたくない、行けないということは子どもが発するSOSである。次期計画案の中にも「学校における相談体制、不登校児童・生徒への支援を充実する」とある。命を支える自殺対策推進センターが今年6月に公表した分析結果によれば、ネット上で「学校」「行きたくない」というワードの検索数が増加した後、子どもの自殺者数が増加したという関連性が判明した。相談窓口を案内するだけではなく、日頃から何でも相談できる人間関係や体制づくり、何よりも行きたくなる学校づくりが大変重要だと考える。学校へ行けない子どもたちへも届くよう、体制づくりを含めた教育長の子どもたちに対する思いを伺う

教育長
国分寺市の子どもたちに「学校の先生に望むことは」と聞いたところ、小学校、中学校ともに第1位が「楽しい行事を増やしてほしい」という回答だった。それに続くのが「体験的な学習をたくさんできるようにしてほしい」、また「興味あることをたくさん勉強できるようにしてほしい」というような前向きな回答を得ている。こうしたすばらしい子どもたちの思いや願いをしっかりと受け止めながら、毎日を過ごす学校が子どもたちにとって楽しく過ごせる場となるように、また来たくなる、明日が楽しみになるような場となるよう学校の体制づくりに取り組んでいきたいと考える

小坂
市の不登校児童・生徒の保護者の方たちがボランティアスタッフとして入る居場所の取組がいずみ児童館で行われると聞いた。ぜひこうした子どもの居場所の取組も進めていってほしい。自殺率の低い自治体を調査研究した結果によれば、何でも話せるコミュニティが歩いて行ける距離にあることが重要だと分かってきたとのこと。本市の計画にも生きることの促進要因を増やすことがリスクを低下させるとある。居場所づくりへの支援が急務と考える
国立市では自殺対策計画の中で、国の自殺総合対策大綱では当面の目標としては2026年までに自殺死亡率を2015年と比べて30%以上減少させることと定めているが、本計画を効果的に促進することを通じて、基本理念である誰もが生きることを保障される社会を実現するため自殺者ゼロを目標とするとしている。本市の次期計画案に自殺者ゼロの目標が書かれていないことは大変残念でならない。「すべての人を大切にするまち宣言」をし、目指すのであれば、自殺者ゼロも目標にすべきではないのか。今回質問するに当たり様々な資料や書籍を読んだが、本市の現在の計画に重要なことの多くは書かれていた。「一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、誰も自殺に追い込まれることのない国分寺市を目指していきます」とある。生きる支援関連施策として挙げられた事業は61、担当課は14にも及んでいる。様々な生きづらさをサポートできたなら、自ら死を選ぶ人を減らすことができると考える。かけがえのない命をひとりもなくすことがないよう、様々な困難への実践的な支援策の強化を全庁的に全力で図っていくことを強く求める